CONCEPT

日々の暮らしが詩になる家を求めて。

私は生活の中に詩性を信じています。
その詩性に憧れ期待をし設計をしています。

家は住む人を守り静かに佇み、いつでも迎え入れてくれます。
自然体で凛とした家は疲れたときには癒し、活力があるときには背中を押してくれる。生きたことを誰よりも証明してくれます。

家は常に生活の背景です。家は家単体では成り立ちません。そこに営まれる生活があってこそ家は完成します。

時に背景は見過ごされがちですが、主役をより美しく際立たせ物語を作るには不可欠なものです。

心地良く日々の生活に没頭できるような家が私の理想の家です。

1.環境との関わり

家には必ず建つ場所の環境が存在します。風が通り抜ける場所、見晴らしのいい場所、日当たりのいい場所。環境の要素を読み取り家の骨格をつくります。
建物の配置によって出来た余白は植栽のための余白になります。地と図は一方的な関係ではなく相互的な関係です。
植栽は隙間を埋めるための手段ではなく、内と外をつなぐ媒体であり、家と街に潤いをもたらします。

2.素材

木は薄い層が幾重にも重なり、最終的に私たちの目には木目となって見えてきます。あるいは、左官の壁は様々な色をもった極小の砂に光が反射し、奥行のある肌理をつくります。
時間が染み込む素材は家の歴史を刻みます。
建てたばかりの時が一番美しい家よりも、日に日に味わいを持つ家は愛着と歴史を生み出します。

3.用強美

使い勝手の良さは毎日の生活の上で大切なことです。そして家が風雪や天災によって住む人を守ることは家の大きな役割です。また居心地の良い場所は日常を豊かにします。
これらのものはそれぞれ綱を引きあい、シーソーのような関係にあります。そうした中で絶妙なバランスを求めることでそれぞれの力が拮抗しあう力強い空間が生まれます。

4.光の形

光は空間の素材です。空間を作るには光は必要不可欠です。太陽の光は生そのものです。料理のように素材を美味しくする工夫が光にも必要です。
木陰は太陽と木々がおりなす重唱。水辺に反射し揺らぎを映す光は、光の形を見せてくれます。障子を通す光は室内を優しい光で満たしてくれます。家は光をより身近に感じることができる場所となります。

5.場所の多様性

一つの空間の中で人の居場所がいくつもあることは、豊穣な空間です。同じ空間の中で家族が、時には集まって、時にはそれぞれの時間を過ごせるような空間。窓辺でも落ち着くこともできれば、部屋の奥にいても落ち着くことができる。その日の体調や気持ちを受け止めてくれる場所があることは家を懐の深いものにしてくれます。