要望と予算

要望は予算以上に多くなりがちです。自分にとっての適正な予算を決めることはとても難しいことです。ほとんどの場合、予算と要望の綱引きがあります。
「出せなくもないが、それだけ出す価値はあるか」ということが多いのではないでしょうか。家というものにどれだけの価値を見出すかによって家にどれだけの対価を払うかが決まります。

生活の唯一無二のこの瞬間をよりよい環境にしたいと思うのならば、家というものにより多くの価値をかける必要があります。

逆に心地の良い家というものを体験したことがなければ、そこに価値を見出すのは不可能かもしれません。どんなに言葉を尽くしても、実際の空間から感じる経験以上に説得力のあるものはないかもしれません。ゆえに私は心地よい家がどんなものかを伝えたいと思っています。

例えば2500万円という予算があったとき、あるところでは40坪の広い家を建てることもできるかもしれません。逆に小さな家でも素材や設計に徹底的にこだわった家を作ることもできます。同じ予算であっても、その内容は住まう人の思う次第で大きく変わります。

予算と要望のせめぎあいの中で、予算は真に必要なものはなにかを教えてくれます。

ウェグナーのYチェアは約10万円します。これが高いと思うか安いと思うか使う人次第になります。私にとって椅子は人生の多くの時間を過ごす伴侶です。30年、40年と一緒に過ごす可能性のあるものです。そうして考えてみると30年で10万円とはとても安いものではないかと感じています。

唯一無二の今この瞬間をよりよいものにするために必要なものであれば、お金をかける価値はあるのではないかと考えています。

家も同様に人生の長い時間を過ごす伴侶であればこそ、これからの生活の基盤となるものにどれだけの比重を置くか考える機会となります。