〇〇風について

ほとんどの建築家は〇〇風や○○調については肯定的ではありません。イミテーションであることが、表面的であるからかもしれません。素材を素材の性質のまま活かすことを建築家は好みます。
木なら木らしく、石なら石らしい素材のまま活かすことを常々考えています。同様に私も素材は素材らしい使い方を好み、プリントされた木目をどうしても好きになれない節があります。

一方で○○風というようなスタイル<様式>はとてもわかりやすいものです。手軽に理想の形式が手に入るパッケージです。パッケージ化することで選択肢を提示し選びやすいようにしています。

本来、様式の発生はその土地の文化や歴史の上に作られたものです。それを採用することは、形だけでなく様式の持っている意味も受け継ぐことになります。本質的に理解されて、その様式が持っている意味に合っている土地柄や建て主の背景が合致していれば、その様式は採用されるべきでしょう。

しかし残念ながら、そうした意味内容で採用されることは少ないかもしれません。

家の○○風を構成する要素のなかで外壁は多くの部分を占めますす。日本の住宅のほとんどで採用されているのが窯業系サイディングです。窯業系サイディングはセメント成分と繊維しつを高温で焼成されたものです。性質としては粘土に近いのでどんな形にもなります。レンガ調にもなればタイル調、木調にもなります。粘土細工によって様々な○○風が可能になります。しかしパネル状の制約のため端々でその矛盾は現れます。

そのため窯業系サイディングで表現されるものは○○風を越えることができず、○○風のまま終始してしまいます。しかし窯業系サイディングの全てが悪いわけではありません。サイディングも使われる背景とその素材らしい使い方で表現されれば、そうした表面的な○○風にならずに済みます。

○○風がよいと思ったとき、見た目ではなく、それの何に惹かれているのかを深く考えてほしいと思っています。もしかしたら○○風にこだわる理由は形ではなく、それが醸し出す一種の雰囲気かもしれません。その雰囲気とは「家族団らん」や「開放的」など、もっと抽象的なイメージにあるかもしれません。